甲斐栄次郎氏コンサート&トーク『オペラへの道』を開催しました

2014.11.19

 

 11月10日、本学人文棟 大講義室にて、バリトン歌手の甲斐栄次郎氏を迎え、コンサート&トーク『オペラへの道』を開催しました。甲斐氏は、熊本出身で、東京藝術大学、同大学院を出られ、10年間にわたり、世界最高峰であるウィーン国立歌劇場の専属ソリストを務められた後、本年4月より東京藝術大学音楽学部の准教授に就任。以前より、本学の中山欽吾学長、音楽科の行天正恭准教授と親交が厚く、帰国を機会に、素晴らしい歌声と共にオペラ歌手となるまでの体験を語っていただきたいということで、今回の催しとなりました。

 前半は、甲斐氏の歌声を披露いただきました。いずれもオペラ劇中の有名アリアを歌っていただき、歌劇『セルセ』(ヘンデル作曲)から“ラルゴ(オンブラ・マイ・フ)”で静かに荘厳に始まり、歌劇『フィガロの結婚』(モーツァルト作曲)から“もう飛ぶまいぞこの蝶々”ではお得意の演目を表現豊かに歌われ、歌劇『ドン・カルロ』(ヴェルディ作曲)から“ロドリーゴの死”では、どっしりと重厚に美声を披露されました。ある時は、会場の空気がビリつくほどの豊かな声量に圧倒され、また繊細な歌表現に魅了され、ウィーン国立歌劇場の響きが芸短で聴けた非常に贅沢なひとときでした。

 後半は、行天准教授とのトークで、生い立ち、歌を志した契機、大学での学生生活、アメリカやイタリアでの修行、そしてウィーンでの専属オペラ歌手としての試練を次々にお話しいただきました。途中、甲斐氏が出演したウィーン国立歌劇場を紹介するテレビ番組が放映され、歌劇場の裏舞台も分りやすく説明いただきました。また、「中学校時代に合唱部に入り、みんなで歌う喜びを知ったことから始まり、デル・モナコというテナー歌手が歌うカンツォーネのレコードを聴き、『声から光を感じ』、この世界に行きたいと考えた。」「ウィーン国立歌劇場では毎日異なる演目が上演されているために、専属ソリストとしてカヴァー(配役に欠員が出たときの代役)に入ることが求められ、5つものオペラ作品を同時に歌わねばならず、死ぬ気で勉強した経験を経て、今の自分がある。」と、『オペラへの道』を語っていただきました。最後に、ライカ製のフィルムカメラで撮ったウィーン街角風景の白黒写真を紹介していただきました。こちらも写真集を出版するほどの腕前で、光を感じさせる素晴らしい作品に、来場された方がたも感動されていました。

 当日は、音楽愛好家や本学学生が多く詰めかけ、有意義な時間となりました。特に、声楽家を目指す学生たちにとっては、夢の階段の厳しさとともに、夢の実現の素晴らしさを教えていただきました。次の機会には、音楽ホールで甲斐氏の歌声を堪能できる機会を期待したいと思います。