芸短DESIGN SCHOOL-名児耶秀美さん講演会を開催しました

2016.02.18

 

 第一線で活躍するデザイナーによる講演会「芸短DESIGN SCHOOL 2016」を2月6日(土)に大分県立美術館で開催しました。4度目となる今回は、デザインプロデューサーで「h concept」(アッシュコンセプト)代表取締役の名児耶秀美さん(なごや ひでよし)をお招きし、「デザインの可能性/デザインとは?/デザインを活用して世の中を元気にする」をテーマに開催しました。

 神田生まれ浅草育ちの名児耶さんは、髙島屋で空間に関する仕事をしていた話に始まり、家業(ブラシ製造)に携わることになった話、モノづくりを通して世の中を元気にする会社「h concept」のこと、そこで手がけるアイテムのこと、デザイナーのことなどを軽快に語りました。

◇ デザインでできること

 家業に携わったことなどから「デザインで会社を変えられる」と実感した名児耶さん。その後の「h concept」設立においては「会社名もデザインの始まり」と考えます。多くの事柄はデザインにつながる、この講演会では、そんな名児耶さんの世界観を聞くことができました。またアートとデザインの違いについて「デザインは商業の上に成り立っています。アートは自己主張・自己表現、作品。デザインは相手がいる、思いやり、商品。相反するものだったけど近年はその両者の接点に注目も集まっています」と話しました。

◇ デザインに込めた思い

 「h concept」の“デザイナーを元気にしたい”ブランド「+d」。製品第1号の「アニマルラバーバンド」(動物型でカラフルなシリコン製の輪ゴム)について「輪ゴムと言えば使い捨ての代表選手ですが、この商品だと捨てずに、知らない間に大切にするのですよ。ものを大切にしようよというメッセージを込めているのです。みんなが自然と笑顔になる商品なのですよ」と話しました。ほかにも、力学と材質、シルエットのモデル、元々のデザインのことまで、会場と対話するように語りました。  

◇ 売り方もデザイン

 売り方についても。値段は6匹セットで324円、24匹セットで540円(税込み)(第1号の製品)。6匹セットは一目で商品が見えるパッケージで、24匹セットは一目では商品を確認できないパッケージです。実際に売れるのはお得な24匹セットだそうです。しかし、6匹セットの商品がないと、見本となるものがなくなり(現物を置くと持って帰られることがあり、困るそうです・・・)、両方が売り場にあることで、売り上げがアップするのだそうです。工夫は説明書にも。日本語のほか、世界で売り出すために英語も表記。そして、ユーモアの詰まった説明文にしました。パッケージも文章もデザインの一部であるという意識が大切だと話します。「この輪ゴムは最初にMoMA(ニューヨーク近代美術館)に売りました。営業もデザインです。MoMAが買った商品ということで営業がスムーズに。最初が量販店ではないところがデザインです」とも話しました。(ユーモアある説明文はコチラをご覧ください)

◇ デザインとは・・・愛 

 そして、デザインについて「デザインは新しいモノをつくるだけではなく組み合わせです。ゴミ箱とサイドテーブルを合体させたり。機能的で、使う人の邪魔にならないなど色々なことを考えて作るのです」と語り、「世界中の人が日本のデザインに対し尊敬と信頼の気持ちを持っている。もっと自信をもってデザインを楽しんでほしい。デザインは使う人のことを考えるという点で『愛』だと思います」と話し、にっこりと笑顔を見せました。

 質疑応答では次々と質問の手が上がりました。学生たちのほか、仕事でデザインをしている方、製造業の方々。デザインと仕事の考え方から意匠権のことまで、一つ一つ丁寧に答えました。最後に、学生たちへ「学内を飛び出してデザインをやっていかないと。先生に『いいかげんにしろ』と言われるくらいにね。大学ではテクニック・技術を学ぶけど、心は自分の経験でしか学べないし、得られないのです。留年してでも時間を有意義に使ってください。明日が最後の日と思って今日を生き抜いてください」と力強く語りかけました。講演後、名児耶さんへ聴講の学生、一般の方々から大きな拍手が送られました。




 

名児耶秀美さん / デザインプロデューサー h concept代表取締役

生活者とデザイナーが楽しめるモノ創りを目指し、デザイナーとのコラボレートブランド「+d」を世界に向けて発信。その他、デザインコンサルティング・地場産業振興コンサルティング等を手がける。武蔵野美術大学客員教授。