Epistula Vol.74 真の「ダイバーシティー」とは?IMFでの経験(2024年3月1日)

Epistula Vol.74(2024年3月1日付)掲載

 IMF(国際通貨基金)は極めてダイバーシティーのない組織でした。英米の経済学部で経済学博士号を得た職員が大部分でした。改革のためにアフリカ系の女性が担当となり、第2位の株主である日本の理事の私の元へ考え方を聞きに来ました。「EUを最初に提案したのは、日本人だったということを知っていますか」と彼女に聞いたところ彼女は驚いていました。

 1894年に初代オーストリア帝国大使と日本人妻みつ子の間に東京で生まれたリヒアルト・クーデンホーフ・カレルギーが1923年に書いた「汎ヨーロッパ」がベストセラーになりました。将来は東洋は日本か中国、西半球は米国が支配することになり、欧州が小国に分立していると彼らに対抗できないので統一されるべきだと彼は提案しました。ヒトラーから目の敵にされた彼は、オーストリアから、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、イタリア、スイス、ポルトガル、モロッコと逃避行を続けました。米国行きのビザを得てニューヨークに着いた彼の話が出版されて大評判になり、映画となったのが「カサブランカ」でした。